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腰痛 ~向き合い方と予防法~

序章|腰痛は2足歩行になった人類の宿命!?

朝、顔を洗おうと前にかがんだ瞬間に「ズキッ」。重い買い物袋を持ち上げたあとに、じわっと広がる重だるさ。——私たち人間は二本の足で立つようになった時から、重い頭と上半身を細い腰で支える“しくみ”を選びました。だから腰痛は「自分だけの不調」ではなく、進化の代償とも言えます。とはいえ、宿命だからとあきらめる必要はありません。

本記事がめざすのは、怖がりすぎずに正しく向き合い、再発を遠ざけること。そのために、まずは腰痛を特異的/非特異的に整理し、痛みと不安の関係をシンプルに理解します。次に、前かがみや荷物のあとの**「これだけ体操」、やさしく緩める「膝倒し」、毎日の座り・立ち・持ち上げのコツへと進み、最後に生活の土台受診の目安**を押さえます。

難しい道具も長い運動もいりません。1〜3分でできる小さな一手を積み重ねるだけで、 “動ける腰”は取り戻せます。では、まずは腰痛の基本の分類からはじめましょう。

第1章|腰痛の種類~原因疾患の有無を確認しよう!~

腰痛は大きく特異的非特異的に分けられます。特異的腰痛は、たとえばヘルニア脊柱管狭窄症など、原因がはっきり特定できるタイプ。非特異的腰痛は、ぎっくり腰慢性的腰痛を含む、検査で明確な原因が見つからないタイプです。

種類 原因
特異的 特定できる ヘルニア、脊柱管狭窄症
非特異的 特定しにくい ぎっくり腰、慢性腰痛

痛みには脳も関わる——不安を手放すこともケアの一部

最新の知見では、腰痛の約8脳の一部が関与しています。不安や恐怖が強いと、DLPFC(背外側前頭前野)が小さくなり、痛みが治りにくくなる可能性が示されています。まずは「心配しすぎない」ことが回復の土台になります。

《用語解説》DLPFC:思考や感情のコントロールに関わる部位で痛みの感じ方にも影響します。

第2章|今日から始められるストレッチ!

腰痛予防として紹介したいのが、厚生労働省の公式マニュアルでも紹介・推奨されている「これだけ体操」です。考案した松平 浩先生は整形外科医・医学博士で、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任教授などを歴任し、腰痛における心理社会的要因まで踏み込んだ研究と臨床を牽引してきた、日本の腰痛対策を代表する専門家です。その功績は公にも高く評価され、2022年に第74回「保健文化賞」を受賞しています。

3秒×1〜2回でOK「これだけ体操」

前かがみ姿勢や重い荷物の後に、3秒×1〜2だけ行うシンプル体操。腰回りを無理なく動かし、こわばりをリセットします。実施のタイミングは、パソコン作業・家事・育児など前かがみが続いた後、または重い荷物の後が推奨です。

写真なしでもわかる手順 ※記事の最後に実践動画も掲載しています。

  1. 足を肩幅より少し広めに、平行に開く(力を抜いてリラックス)
  2. 両手を骨盤のうしろ(骨盤後面)に当てる
     ※腰(腰椎)に手を当てないのがコツ
  3. 息を吐き、胸を開きながら手のひらで骨盤を前へ3押し込む
  4. ③を1〜2だけ行う(やり過ぎない)

実施メモ:痛みの強い日は「1回だけ・浅く」でもOK。無理は不要です。

よくある間違いと改善ポイント

  • × 腰に手を当てる骨盤の後面に手を当てる(押す対象は骨盤
  • × 息を止める吐きながら胸をひらくと、腹圧が安定して安全
  • × 何回も繰り返す○ 1〜2回で十分(やり過ぎは逆効果)

いつやる?

  • パソコン作業、家事・育児など前かがみの作業が続いた後
  • 重い荷物を持った後
  • 腰に“こわばり”を感じた時

安全のための注意

  • 強い痛みやしびれがある、あるいは診断・治療中の方は医師の指示に従う。自己判断で無理をしない。
  • 実施はゆっくり・やさしく。痛みが出る角度の手前で止める(“痛気持ちいい”まで)。

第3章|「膝倒し」で腰の筋肉を自然に伸ばす!

目的:腰の筋肉を自然に伸ばし、ぎっくり腰を予防

「膝倒し」は、ベッドや床でできるやさしいストレッチ。腰の筋肉を自然に伸ばしぎっくり腰の予防にも役立ちます。パソコン作業・家事・育児など前かがみ姿勢が続いた後や、重い荷物を持った後推奨です。

手順:1分でできる4ステップ

  1. 仰向けになり、膝を立てて足をそろえる
  2. 膝をつけたまま左・右に倒して戻す。このとき倒しにくさがないかをチェック
  3. 左右差があるときは、倒しやすかった側へ5〜6ゆっくり倒して戻す。
     ※縮んだ筋肉を無理に伸ばすのではなく反対側を伸ばすことでやさしく緩めます。
  4. 仕上げに、もう一度左右に倒して改善の有無をチェック。

よくある疑問

  • どちらに回数をかける?倒しやすかった側5〜6。硬い側を無理に伸ばさないのがコツ。
  • 痛みが出る… → その場で中止し、無理をしない。強い痛みやしびれがある場合は医師の指示に従ってください。※このストレッチは非特異的腰痛に効果的とされています。
  • 効果を感じにくい…前かがみ後の“固まりやすいタイミング”で行うと実感しやすいです。

第4章|腰にやさしい3つの姿勢

座る:3チェックで“ラクな姿勢”をキープ

  • 足裏全体が床にしっかり接している
  • 椅子と太ももの間に「ゆとり」がある(圧迫しない)。
  • 椅子に深く腰掛けて、背もたれに背を当てる。

避けたい姿勢猫背反り腰。どちらも腰に負担が集中します。

立つ:片足を少し前にで重心が安定

長時間立つときは、片足を少し前に出して開くと、骨盤が安定して腰のこわばりを防げます。反り腰や猫背を避ける意識もセットで。

持ち上げる:近づける+片膝つき+脚で立つ

荷物はできるだけ体に近づけ、重心を低く。床から持ち上げるときは、

  1. 片足を少し前に片膝を曲げて床につく
  2. 腰を十分下ろして荷物を抱える(背中は丸めずに)
  3. 膝を伸ばしながら全身で立ち上がる(腰だけで起こさない)
    という順で行うのが安全です。

安全メモ強い痛みやしびれがあるときは自己判断で続けず、医師の指示に従ってください。

第5章|再発を遠ざける4つの生活習慣

1) 身体を冷やさない:温かい“習慣”でこわばりを予防

  • 朝と夜は腰〜骨盤まわりを冷やさない衣服に。
  • デスクワーク時はひざ掛け一枚羽織るをセット化。
  • 入浴はぬるめで10〜15、上がったらすぐ保温

前かがみ作業の後は「これだけ体操→膝倒し」で温まった可動域をキープ。

2) 体重を増やさない:腰の“荷物”を軽くする

  • まずは飲み物から見直し(甘い清涼飲料→水・お茶へ)。
  • 通勤・買い物で+5分歩くを毎日。
  • いきなり完璧を目指さず、1回だけ軽めの日など、小さく始める。

体重コントロールは、作業姿勢の工夫(近い・低い・脚で)で腰への局所負担を分散できます。

3) バランスのよい食事:からだ作りは“毎日の一皿”から

  • 主食・主菜・副菜をそろえる(丼ものは野菜や汁物をプラス)。
  • タンパク質(魚・肉・卵・大豆)を毎食少量でも確保。
  • おやつは果物・ヨーグルト・ナッツなど、置き換えで無理なく。

食事は“継続できる範囲で”が最優先。心配しすぎないことも、実は食生活の継続に直結します。

4) 心配しすぎない:不安を下げる“3つのスイッチ”

  • これだけ体操(3秒×1〜2回)を前かがみ作業の後に。短く終わるケアは不安を増やさない
  • 膝倒し倒しやすい側に5〜6。できた実感が安心感につながる。
  • 姿勢の3チェック(足裏・ゆとり・深く背当て)で体の警戒信号を静める。

不安や恐怖が強いとDLPFCが萎縮し痛みが長引く可能性があります。だからこそ「心配しすぎない」ことが大切です。

まとめ

腰痛の多くは原因がわからない非特異的腰痛です。強い痛み・しびれがあれば自己判断せず主治医に相談してください。前かがみの姿勢のあとや重い荷物を持った直後は、まず『これだけ体操』(3秒×1〜2回)を行い、続けて“倒しやすい側”へ5〜6回の『膝倒し』で仕上げる——この順番でやさしくリセットしてください。日常動作では、座りは足裏を床に/太ももにゆとり/深く背もたれへ、持ち上げは「近い・低い・脚で」を意識し、そのうえで、冷やさない・体重を増やさない・バランスのよい食事・心配しすぎないという4原則を土台に、できる範囲で続けましょう。

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