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特殊健康診断
特殊健康診断について
特殊健康診断とは、労働者が職業上特定のリスクや有害な条件にさらされる可能性がある業種で働く人々を対象とした、健康診断の一種です。これには、特定の化学物質、放射性物質の取り扱い、高所作業、騒音や振動が多い環境、極端な温度条件での作業など、健康に悪影響を及ぼす可能性のある業務が含まれます。労働安全衛生法や関連する規則に基づき、これらの条件下で働く労働者に対しては、定期的な健康診断が義務付けられています。
特殊健康診断の範囲は、検査対象となる業務の種類や、労働者が普段から接触している物質によって異なります。診断内容は一般的な身体検査から、特定の健康リスクに対応するための特別な検査(例えば、有害物質の暴露レベルを測定する検査や、聴力損失を検出するための聴覚テストなど)まで、幅広いものに及びます。
実施される特殊健康診断の結果に基づいて、労働者の健康状態に応じた適切な措置が講じられます。これには、労働条件の改善、作業環境の調整、特定の業務からの一時的または恒久的な除外、健康教育や予防接種の提供などが含まれる場合があります。特殊健康診断は、労働者自身の健康を守るだけでなく、職場全体の安全と健康を向上させるために不可欠な役割を果たします。
特殊健康診断の内容
有機溶剤健康診断
一定の有機溶剤業務に常時従事する労働者に対しては、雇い入れ時・当該業務への配置替えの際及び、6ヶ月以内ごとに1回定期に、法律に基づいた健康診断を行わなければなりません。
対象
法令で定められた有機溶剤業務に従事する労働者(6ヶ月以内ごとに1回実施)
健康診断項目
- 業務の経歴の調査
- 尿代謝物検査(馬尿酸・メチル馬尿酸・マンデル酸等)
- 問診および医師の診察
- 採血(肝機能検査、貧血検査等)
- 尿検査(尿中蛋白の有無)
- 眼底検査
追加検査が必要な有機溶剤
NO. | 追加検査が必要な有機溶剤 | 尿代謝物 | 血液検査 | その他 |
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6 | エチレングリコールモノエチルエーテル | 貧血検査 (赤血球数、血色素量) |
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7 | エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート | 貧血検査 (赤血球数、血色素量) |
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8 | エチレングリコールモノ(-ノルマル-)ブチルエーテル | 貧血検査 (赤血球数、血色素量) |
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9 | エチレングリコールモノメチルエーテル | 貧血検査 (赤血球数、血色素量) |
||
10 | オルトジクロルべンゼン | 肝機能検査 (GOT、GPT、γ-GTP) |
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11 | キシレン | メチル馬尿酸 | ||
12 | クレゾール | 肝機能検査 (GOT、GPT、γ-GTP) |
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13 | クロルベンゼン | 肝機能検査 (GOT、GPT、γ-GTP) |
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28 | 1・2-ジクロルエチレン | 肝機能検査 (GOT、GPT、γ-GTP) |
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30 | N・N-ジメチルホルムアミド | N-メチルホルムアルデヒド | 肝機能検査 (GOT、GPT、γ-GTP) |
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35 | 1・1・1-トリクロルエタン | 総三塩化物 | ||
37 | トルエン | 馬尿酸 | ||
38 | 二硫化炭素 | 眼底 | ||
39 | ノルマルヘキサン | 2・5ヘキサンジオン |
特定化学物質健康診断
特定化学物質を取り扱う業務に従事する労働者は、雇入れ時・配置換などを含め6ヶ月ごとの定期健診が必要です。在職中の労働者も同様です。
対象
法令で定められた特定化学物質を取り扱う労働者(6ヶ月以内ごとに1回実施)
健康診断項目
- 業務の経歴の調査
- 自他覚症状の有無の調査
- 既病歴の有無の調査
- その他、化学物質ごとに健康診断項目が定められています
じん肺健康診断
じん肺法に基づき、粉じん作業に従事する労働者は、雇入れ時・配置替えなどによる定期健診が必要です。
対象
法令で定められた24種類の粉じん作業に従事する労働者、または過去に従事した経験のある労働者が対象です。
健康診断項目
- 問診(粉じん作業についての職歴の調査等)
- その他医師が必要と認めた検査(肺機能検査等)
- 胸部エックス線検査(直接撮影)
石綿健康診断
特定の石綿業務に従事する労働者は、雇入れ時・配置換えを含め、6ヶ月ごとの定期健診が必要です。過去に石綿業務に従事した経験のある労働者も対象です。
対象
特定石綿等を製造し、もしくは取り扱う業務に従事する労働者または、従事したことのある労働者(6ヶ月以内ごとに1回実施)
健康診断項目
- 業務の経歴の調査
- 胸部エックス線検査(直接撮影)
- 問診および医師の診察
電離放射線健康診断
放射線業務に従事する労働者は、雇入れ時・配置換えなどを含め、6ヶ月ごとの定期健診が必要です。
対象
放射線業務に従事し、管理区域に立ち入る労働者(6ヶ月以内ごとに1回実施)
健康診断項目
- 被ばく歴の有無の調査およびその評価
- 白内障に関する眼の検査
- 白血球数および白血球百分率の検査
- 皮膚の検査
- 赤血球数、血色素量またはヘマトクリット値の検査
注意事項
- 使用中もしくは使用した有機溶剤により、採尿の時期を指定する場合があります。
- アルコールが検査値に影響する可能性に配慮し、採尿前日の飲酒はお控えください。
- 受診日には採血や尿検査も行います。
- 採尿する前の水分補給は水やお茶に限定してください。果実系のジュースや清涼飲料水(コーラやスポーツドリンク)、栄養ドリンクなどは飲まないでください。